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昨日(6月30日)、事務所のある上海浦東新区の共産党研修施設「浦東党校」に 行きました。「2012年海帰班集会」という集まりに参加するためでした。 「海帰」は海を渡ってから帰ってきたことの意味があるから、帰国留学生を 意味する言葉になっています。中国語の「海亀」と同じ発音のため、今では 帰国した留学生はよく「海亀」と呼ばれています。

私が集まりに参加した理由は、昨年同じところで「留学生研修班」という 名の研修セミナーに出席したからです。これは毎年1回、区政府が主催している 創業セミナーのような勉強会です。私は9回目に参加しましたので、同じ9期生 は数十人もいました。同じような勉強会は各区や市レベルで定期的に開催されて いることを参加してから分かりました。

昨日の集会に一番最初の1期生から今年の10期生のメンバーが集まり、成功した 人もいるし、これから頑張る人もいて、お互いに創業の経験や心得を ディスカッションしました。

ここではひとつ面白い現象があります。「留学生研修班」に出ている人は中国国籍 の人とは限りません。アメリカ国籍に、イギリス国籍、フランス国籍等違う国籍に 変えた「外国人」が大勢います。私のように「帰国」したわけでもない人も入って います。私を含めてなぜみんな上海に来て「留学生研修班」に参加しているのか というと簡単です。政府がいろんな補助金や優遇政策を出して、創業を支援して くれるからです。

海外にいる優秀な人を呼びa戻して経済をよくしたいと考えは政府にありました。 しかし、国籍を変えた人、外国にずっと住み続けていた人等、いろんな現実的な 問題点があったので、政策を実行しやすいために「帰国留学生」という曖昧な表現 ですべての問題点を乗り越えたと私が推測しています。元留学生がここで創業 すれば、国籍や住居地等関係なく、すべて「帰国留学生」として政府の支援を 受けることができます。

実は、このような曖昧の表現は中国でよく見受けられます。

「一国両制」のような表現で香港とマカオを返還してもらいました。中国人が香港に 行く時に、ビザの代わりに通行許可証が求められます。なぜ同じ国の中なのに許可 がないと行けないのか、外国の方なら首を傾げるはずです。しかも、通貨も香港ドル やマカオパタカのように統一していないので旅行しに行く人によってかなり面倒です。

「経済特区」や「開発区」の表現も同じです。従来の法律で出来ないことは、特区 だからできます。土地の売買から、税率、政府の権限等々、特区という名の元で いろんな問題を一気にクリアしてしまいます。例えば、開発区の企業なら、地方政府 は地方税の一部を企業に返したり、減免したりできます。

国籍を変えた人を一度裏切った人と見るのか、必要な人材として見るのか考え方 によって異なります。グローバル的な人材の囲い込みは狭い意味のナショナリズム を超えて行われていることを勉強会の9期生としてよく実感しました。「海亀」だけ ではなく、純粋の外国人創業者向けの支援策も国レベルから地方レベルまで 色んな内容のものがあります。

中国語の話し言葉に「片目を開き、片目を閉じる」という言い方があります。「目を つぶる」という意味です。時には真面目ではなく、曖昧の方がうまくいくということも 人間の知恵かもしれません。

About author

楊 博 代表取締役

中国科学技術大学卒、大阪大学大学院修士課程修了。システムエンジニアからプロジェクトマネージャーを経験し、ネットベンチャーの起業から失敗も味わいました。2003年に株式会社シング(XING Inc.)を設立し、システムの受託開発からモバイルインターネットサービスの企画開発を行っています。2012年に上海政府支援プロジェクト「浦江人材計画」に選ばれました。